文筆家で<家族と一年商店>の店主である中村 暁野さんとGOOD NIGHT SUIT SHOPでエシカルトークをいたしました。

前回はGNSを立ち上げたきっかけ~オーガニックコットンへの切り替え、そしてオーガニックコットンを使うことの大切さなどをお伝えいたしました。

 

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オーガニックコットンの、その先 

 

暁野(以降A): GNSは、大袈裟じゃなくて何か使命を背負ってやっているよね。生地を全てオーガニックコッンに切り替えても、問題はそれだけじゃない。

智有(以降T): はい、オーガニックコットンには、認証があるものとないものがあって。認証があるものは、トレーサビリティ*があるんですね。それは、そのコットンがどこで誰によって栽培されたかがわかるようになっている、ということです。うちも認証コットンしか使わないんですが、それを日本に持ってきて、工場で染色を行う際に、一般的には化学染料と大量の水を使って生地を染めるんですね。60度ぐらいに水を沸かして染めるんですが、そこにも大量の重油を使うんです。それに対して、エコテックス認証*のある工場では、重油を使わずに木材のチップを燃やして温度をあげたり、染色に使った水をバクテリアを使ったりして処理分解してから川に流す。それを知ってから、僕たちは、エコテックスの認証を持っているところでしか染色をしないように決めました。 

*トレーサビリティ:商品の生産から消費までの過程を追跡できる状態にすること

*エコテックス認証:繊維製品の製造過程で使われる化学物質に、人体に有害なものが含まれていないことを証明する国際的な安全基準

※グリーンピース・ジャパンより写真引用


A: 工場の方々も、社会的に環境に対する意識が高まってきたこともあってエコテックス認証を取得したのかな? 

T : ブランド側からその部分がどうなってるのか問われて取得するケースもあると思いますけど、このまま環境破壊を続けてはダメだよね、と思い始めた工場が動き始めていますね。 

A: 縫製の部分では、エシカルな動きはあるのかな? 

T : 縫製になってくるとまだ問題が多いです。今、海外から外国人技能実習生に来てもらって、縫製工場で仕事をしてもらうというパターンが殆どの状態になってきているんです。日本製の服を作りたいけれど、日本人と同じ賃金を払って雇うことは生産コスト上難しい。だからそういった外国人の方を雇って、日本で服を縫わせているんですね。なので made in JAPANと言いつつ、縫っているのは外国人技能実習生というのが実情ですね。 

咲(以降S): 技能実習制度にもたくさん問題があります。正直、現代の奴隷みたいな制度なんですよね。残業代も払われなかったりして、夜逃げも多くて。そのような人が逃げ込む組合があって、その組合もまた闇があって。そもそもその実習生達は日本に来るためにも、事前にたくさんのお金を払ってきているんですよね。借金などをしてね。 

 

T: 僕たちの縫製をお願いしている工場さんは、フィリピンからの技能実習生がいるんですけど、その工場さんは、セブ島支部の工場の技術を上げていただくために、そこで働くフィリピン人の従業員さんを一定期間日本に招致して仕事をしてもらっているんです。実はその工場さんも最近エコテックスの認証を取られたんですよ。 

A : GNSのパジャマは生地がオーガニックコットンなだけではなくて、染色も、縫製も、自信を持ってエシカルな生産背景があると言えるパジャマ、だね。 

S: いえ、まだまだ課題はありますよ。何かというと、縫製の糸とボタン。糸は市場の縫製糸がほとんどポリエステル製なんですね。ポリエステル製だと何百色もの選択肢があるので、どんな生地であっても色が合わせられる縫製糸がたくさんあります。 

T:  そんな中で、最近コットンでも色数が増えてきたんですよ。技術も進んで、ポリエステルと同じくらい強度もあります。なので、GNSは縫製糸はポリエステルからコットンに完全に切り替えています。ただ・・・オーガニックコットンの縫製糸となると、白と黒と生成りぐらいの色バリエーションしかないんですね。ちなみにGNSのタオルは、そのオーガニックコットンの縫製糸を使っています。

A : 市場にあまりない、ということは、縫製を含めて全てオーガニックコットンで作ろう!と思っているブランドはほとんどないということだよね。そんな表示義務もないわけだし。 

S: そうなんです。だからこそ、私たちはもうここまできたら、一切マイクロプラスティックが流れない服を作りたい!と思っています。 

 

A :ちなみにボタンの問題って? 

T: 貝ボタンも、実は闇がありそうで。今のところ、貝ボタンは一切トレーサビリティがなくて。恐らく児童労働で子供に貝を拾わせていることもあると思いますよ。どこで作ってボタンにしたかも、今のボタン市場では残念ながら分からなくて。海外から輸入したものが殆どで、尚更トレーサビリティが低いんです。ですが、奈良県に貝ボタンを作っているボタン屋さんがあって、僕たちは made in NARAで作っているボタンを今後採用しようと思っています。 

A : 本当に今まで、ボタン屋さんもボタンのトレーサビリティについて聞かれたこともないんだよね。だからそれを問うこともなかったのだろうね。 

T :ファッション業界のトレーサビリティを明確にしていこう、というのがアパレル業界全体の今の課題。トレースできないということの問題について、意識が少しづつ芽生え始めたところですね。 

A: だからこそ、消費者がそういうことを問い合わせたりしていくことが本当に大切だよね。そういう人が増えると、業界が変わっていく。 

T :はい、私たちGNSも安里紗さんの一言によって変わったんだし、エコテックス認証を取った工場さんも、きっとそうやって変わっていったんですよね。消費者の言葉に耳を傾けてくれる、良心があるブランドの存在を信じて、特に好きなブランドさんには問い合わせ続けていくことが大事ですね。

 僕もよく問い合わせしていましたよ、オーガニックコットン使わないんですか?みたいな。ほとんど返事は来ないですけど、ボディブローのようにじわじわ効いていけば良いなと。 

 

 

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次回は、着られなくなった後のこと、そしてGNSが目指すこととは。

最終話です!ぜひご覧ください。

October 22, 2025 — KANDORISAKI